2010.12.10UPDATE
著名ブロガー「切込隊長」としても知られる実業家/投資家の山本一郎氏に次世代通信規格「LTE(Long Term Evolution)」について話をうかがう最終回、人との関係に与える影響について聞いてみました。(クロッシィジャーナル編集部)
LTEサービスが始まると、本来の電話の機能だった「通話」以外の使い方が大幅に増えて、これまで親しんできた電話番号や携帯端末のインターフェイスが変わってくるでしょう。
例えば、今はアプリを起動することによって実現しているサービスが、携帯端末に触れるだけで実現する。サーバーから動画・音声・アプリというのがシームレスに端末に繋がってきて、まさに手のひらで動いているかのような世界観になる。電源を入れると直ぐに情報がダウンロードされ、ユーザーがログインするたびに最新の状態に更新される。そうなると、どこからがデータ・情報で、音声か、アプリか、という話になってくる。つまり、動画などの情報や音声・アプリというものが全てフラットな存在として端末に存在して、アプリという概念がなくなるのでは、と考えています。
そして、音声・アプリのみならず、人との繋がりも、シームレスに実現する可能性もあります。どこからどこまでが通話で、どれがメールで、チャットもテレビ電話もデバイスや帯域や電池のボトルネックがない限りどこまでも統合されていくのでしょう。例えば、今は携帯電話で話をしたり、あるいは直接会って話したりしていることが、すべて携帯端末の中でできてしまう、「いつでも隣にいる」感覚が得られる可能性はあります。それをどう実現するのかというとまだまだハードルはあるわけですが、コミュニケーションの密度と、そこから得られる相手との共感は、本質的に通信速度やデータ量に依存すると考えられるため、LTEの延長線上にはもっとリアルに近いコミュニケーションが実現できることは疑いないのです。
知人がどこにいようが、何をしていようが、いつでも端末でその人の存在が把握できる、といえばいいでしょうか。
感覚的には、ホントは直ぐそばにいるのに、あえて声をかけない、「会社の執務スペース」みたいな感じだと思います。そこに相手がいることは分かっても声はかけず、必要な時に声をかけるといった距離感です。そうなってくるとコミュニケーションで伝える対象が変わってくるでしょうね。今まではキレイな音声や途切れないことに重きがおかれていましたが、それ以前に「声をかけていいのか?」が分かるような感情的なことや、誰と何をしているのかなどのその人の状況が伝達の対象になってくる。
そんなことに意味があるのか、ということもありますが、そこを敢えて考えることで次のネットの成長が見えてくるのではないでしょうか。(了)