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2010.12.10UPDATE

高速携帯通信 音楽・映像の待ち時間が体感で3〜5倍速くなる

携帯電話で光回線並みの通信速度を実現する、次世代通信規格「LTE(Long Term Evolution)」のサービスが、12月24日、NTTドコモからスタートする。が、そもそも携帯通信が高速になると、私たちの生活に、いったいどんな影響があるのだろうか? ツイッターや音楽著作権など、現代のメディア事情をあらゆる角度から解読する、メディアジャーナリストの津田大介氏にお話をうかがった。

【LTEでアプリがクラウド化し、常に通信しながら動画や音楽を楽しめる】

携帯電話がLTEのような高速通信になってくると、まずひとつ変わることは、音楽や動画をクラウドに置いて楽しめるようになることだと思います。

スピードの恩恵を受けるためには、端末の処理能力も大切なんですよね。いわゆるガラケー(ガラパゴス・ケータイ)と言われているフィーチャーフォン(多機能携帯)の時代は、いくら速度が上がっても、端末の能力が追いつかなかった。でも最近はスマートフォンなどの処理速度がどんどん上がってきているから、たとえばWiMAXのモバイルルーターでiPadなどを使っていると、すごく高速で、いろんなことができたりする。

これからは、そういうスマートフォンなどがLTEと組み合わさることで、ますますいろんなことのレスポンスが速くなっていくでしょうね。そうすると、どんどんクラウドで処理できるようになって、どこからでも自分のパソコン上のデータを使えるようになる。アプリがクラウド化していく。

たとえば音楽配信でいうと、定額制であれば、わざわざダウンロードして聴くというプロセスが必要なくなって、全部ストリーミングで聴けばいいじゃん、ということになる。いまは配布してないんですけど、昔iPhoneでsimplify mediaというサービスがありました。それは、自分のパソコン上のiTunesライブラリーに、どこにいてもiPhoneからアクセスできるというもので、相当便利だったんですよね。

8GBのiPhoneとかでも、そこに音楽を入れる必要はなくて、パソコンのiTunesに入れておけば、いつでもストリーミングで聴けたんです。LTEになれば、それがより高音質なものになって、常に通信しながら動画や音楽を楽しめる。完全にクラウドサービスですよね。ローカルのハードディスクに何十GBのデータがあっても、モバイルからそこにアクセスすることができる。

そんな風に携帯電話がビューアとして使われるようになっていくと、所有という概念が変わりますよね。クラウドやパソコンに音楽や映像を溜め込んで、どこでも取り出せるようになりますから。レスポンスもケタ違いに良くなりますし。待ち時間が、おそらく体感的に3倍から5倍速くなっていくんじゃないでしょうか。そうすると気軽にいろんなことがやりやすくなっていって、いまのiTunesの流行りみたいなものも、また加速していくでしょうね。

一方で、配信する側としては、高画質・高音質なソフトを提供しやすくなりますよね。いままで3G回線とかを前提としていたときは、安いものしかできなくて、そのために圧縮技術などを使っていたわけですが、これからはよりリッチなものも配信できるようになる。LTEならではの表現をする人も出てくるでしょうし、いろんな可能性がひろがっていく。僕も、始まったら契約すると思いますよ。

津田大介
1973年東京生まれ。コンテンツビジネス周辺や著作権、IT、ネットサービスなどをフィールドにするメディアジャーナリスト。著書に「ツイッター社会論」(洋泉社)、「未来型サバイバル音楽論」(中公新書)など。

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