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2010.12.17UPDATE

津田大介氏、Ustreamは移動の革命 どこでもドアの時代がやってきた

ドコモがサービス開始する、次世代通信規格「LTE(Long Term Evolution)」。携帯電話で光回線並みの通信速度を実現するこのサービスで、コミュニケーションは変わるのだろうか? 「ツイッター社会論」で新たなリアルタイム・コミュニケーションの潮流を解読したメディアジャーナリストの津田大介氏に、お話をうかがった。

【ツイッターのサクサク感が、動画や音声にも】

LTEの登場で、ネット上のコミュニケーションがどう変わるか。たとえばメールで写真を送るときを考えてみましょう。携帯のカメラも、だんだん画素が大きくなってきたじゃないですか。数百キロバイト、メガになると、送信するのも時間かかって、30〜40秒くらいかかりますよね。それが仮にLTEで3秒になれば、ずいぶん気軽に送れるようになってくる。

そうすると、かなり世界が変わると思うんです。たとえばHDの動画撮って、処理できるような性能になってきたりね。「待ち時間」ってけっこう重要なんですよ。ツイッターの長所のひとつは、あのサクサク感じゃないですか。テキストだけで軽いから。ああいうサクサクしたやりとりが、これからは動画でも写真でも音声でもできるようになっていく。

もちろん速くなっただけではダメで、それを処理できるだけの端末の性能が必要ですよね。同じ速度の回線を使っていても、処理速度の速いPCを使えばもっと速くなるのと同じことです。通信が高速化していくと、端末の高機能化とか高性能化の競争も激化するような気がしますね。

メーカーにとっても、大変だけどやりがいがあるんじゃないでしょうか。競争が激化すれば、部材とかが安くなっていくわけだし。たとえばiPhoneだったら、中身はいじれないけど、アンドロイドだったらある程度カスタマイズできる。そういう意味ではアンドロイドの方が、メーカーの技術力が関与できる余地がありますね。シャープなんかはアンドロイドをカスタマイズして、使いやすくなっている。ここからはメーカーごとの使いこなし方が変わってくるでしょうね。

【LTE×Ustは、移動の革命】

「Ustream (以下、Ust)ってどこでもドアだよね」という話をよくするんです。たとえば、東京に住んでいたら、大阪のイベントに行きたくても行けない。でもUstだったらすぐに見に行って、離脱可能で戻ってこれる。その「どこでもドア」みたいなものがリアルタイム生中継だとしたら、LTEが進化することによって、誰もがそれをできるようになる。

そうすると、日本全国のあらゆる場所のおもしろそうなものが中継され、それを選んで、行って、帰ってきて、みたいなことをできるようになる。もちろん、そこはプライバシーの問題もあるし、事前に許可を取ったものでなくてはいけないんだけれども。そういうルールも、これからできていくんでしょうね。

LTEが日本全国にあまねく普及したとしたら、いままでは見ることができなかったようなもの……、たとえば「こんな山奥に、こんな面白いものが!」みたいなことも、見ることが可能になる。まさにどこでもドアですよね。だから実は、Ustって移動の革命じゃないか、という言い方もできるんですよ。それで興味を持ったら、実際にそこにいってみよう、となったりしてね。そこから通信だけじゃなくて、リアルな人と人のコミュニケーションが生まれることもあるわけです。

ツイッターなどのリアルタイム・コミュニケーションで、いろんな人がフラットにつながることができるようになったわけですが、それはあくまできっかけにすぎない。その後に大事なのは、オフラインのコミュニケーションではないかと思うんです。オンラインで話すのと、実際に会って話すのとでは、全く違うし。LTEが出てくることで、さらにそういうきっかけが増大して、違う形の出会いも増えていく。それはいいことだと思うんですよ。その上で、より仲良くなったり、よりリアルなコミュニケーションもしたいという人も出てくるかなと。そういう切り分けが、これからどんどん進んでいくのかなと思いますね。

津田大介
1973年東京生まれ。コンテンツビジネス周辺や著作権、IT、ネットサービスなどをフィールドにするメディアジャーナリスト。著書に「ツイッター社会論」(洋泉社)、「未来型サバイバル音楽論」(中公新書)など。

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